「ねぇ、レギュラス。やっぱり行かない方がいいわ」
彼女は不安げに僕のローブの裾を引っ張った。
今日、僕はあの人を裏切る。
いや、ずっと裏切ってきていた。ただ、今日その動きを確定的な物にしようというだけなのだ。
これがばれれば僕らの命はないだろう。だが、やらねばならない。
「貴方が行く必要はないわ。騎士団に助けを請いましょうよ」
僕は静かに首を振った。
彼女もわかっている。
騎士団の情報は筒抜け。騎士団に助けを求める方が危険なことぐらい。
これを成すことが出来るのは自分しかいないのだ。
縋るの手をそっと離させた。
「、大丈夫。絶対帰ってくるから。第一僕は生まれてくるこの子の顔を見るまでは死ねない。あの人に見つからないよう、ちゃんと手も打ってある。だから大丈夫だよ」
そう言って優しく抱きしめる。彼女はより顔をゆがめたが静かに力を抜いた。
「死なないで」
「大丈夫だよ。行ってくる」
僕はじわりと涙をこぼす彼女の頭に軽くキスをした。
なんで僕の意識は朦朧としているのだろうか。
無事やるべきことは終えて、あとは家に帰るだけだったはずなのに。
あれ、兄さん?なんで兄さんがいるんだ?
そもそもなんで朦朧としているのに僕は物を考えているのだろう。
まあ、なんでもいいや。
とにかくひどくねむいんだ。
おきたらいえにかえろう。
ひどく、ねむいんだ・・・・・・。ひどく・・・・・・
ねぇ、レギュラス。
わたしね、すごく幸せだった。
あなたに愛されて、あなたを愛せて。
あなたとの子供まで授かれて。
もうこれ以上何もいらないくらい幸せだったのよ。
ねぇ。何故あなたは死んでしまったの。
問い掛けたいのは何故。
なんで、