レギュラスが死んだ。
いや、俺が殺した。見殺しにした。

愛する彼女に愛されているあいつが許せなかった。
憎かった。

引き裂かれたローブから血をにじませ助けてくれと懇願する血を分けた弟が汚らしいけだものに見えた。
俺からを奪った”それ”を助けたいとは思えなかった。


「にいさん・・・を・・・頼む・・・だけは・・・・・・っ」


死喰い人に囲まれながら必死にそう訴える弟を俺はただただ見ているだけだった。

死喰い人達が去った後には、黒いぼろ切れのような塊が転がっているだけだった。
それを見てようやく自分が何をしていたのか認識した。同時に涙が零れた。
肉親を、弟を、見捨ててしまった。死んでしまった。殺してしまった。
自分の下劣さに気づき俺は嘔吐し、泣き叫んだ。


何故動かなかったんだ。







   ・    ・    ・







「いらっしゃい。久しぶりね?シリウス」

「ああ、突然すまない」

「いいのよ。でもレギュラスはいないわよ?」

「ああ、知ってる」


彼女はそうなの?と不思議そうな顔をしながら俺に紅茶を出してくれた。


「本当、久しぶりね」

そう言いながら自分の分の紅茶も注ぐ
彼女の腹は膨らんでいた。
そうか。子供がいるのか。レギュラスと幸せな家庭を築くはずだったのか。
俺があの時助けてさえいれば、彼女は、は・・・。
どうしようもない後ろめたさでいっぱいだった。

俺の視線に気付いたのか彼女はふふっと笑った。
昔と変わらない。柔らかな笑顔だ。

「そうよ。レギュラスの子を授かったの。性別はまだわからないんだけどね。レギュラスが聞かないでおこうって。
名前を付けるのに困るじゃない」

ねぇ?と嬉しそうにお腹に笑顔を向ける彼女。
俺は自分のこぶしをぎゅっと握りしめた。

「そうか。おめでとう」

彼女は擽ったそうに「ありがとう」と返した。

「今日は謝りに来たんだ」

神妙な顔をする俺を不思議そうな顔で見るリオ。
ああ、本当にすまない。
俺はまたお前を傷付ける。

「レギュラスが死んだ」

存外、言いよどむこともなく言葉はすらりと出た。

彼女は一瞬目を大きく見開いたあと「そうなの」と俯いた。
どうやらあいつが死ぬかも知れないとわかっていたらしい。
瞳から涙がぽたぽたと零れ落ちていた。
わかっていて尚、自分を励まそうと明るく振舞っていたのか。

「すまない」

本当に。

「すまない」

彼女は何も言わなかった。

「俺はあいつを見殺しにした」

彼女はそれでも何も言わなかった。言えなかったのか、言わなかったのか、それは俺にはわからない。
ただひたすらに俯いて涙を机に落としていた。

「本当にすまなかった。俺は・・・」

お前のことを愛している。それは言えなかった。
彼女がどれだけレギュラスを愛していたのかわかったから。

「すまない・・・」

お前にも、生まれてくる子供にも、レギュラスにも。

俺には泣きながら謝る事しかできなかった。




レギュラスがいなくなればまた俺を愛してくれるんじゃないかと思った。
そんな事あるはずなかったんだ。
何故俺はこんなにも馬鹿なことをしてしまったのか。

畜生、

ただ悔やむ事しかできない。








希望系の台詞    

ただただ、愛してほしかった、
 














あとがき

もうほんと誰も報われませんでした。はい。
でもヒロインちゃんとレギュは見方によっては幸せだったし報われてたんじゃないでしょうか。
シリウスはあれです。自業自得です。
そんな感じで終わりました。
残されたヒロインちゃんと子供がどうなったのかは皆様のご想像にお任せします。
ご愛読ありがとうございました!
ちゃんちゃん。



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