「ほら、今動いたでしょう?」

妊娠中の女性らしく膨らんだ彼女の腹が微かに、だが確かにピクンと動いた。
僕はびっくりして思わずお腹にあてがっていた頭を離して間抜けに口をぱくぱくさせる。
ニッコリとね?笑う彼女に僕は大きく頷いた。

この中に生命が宿っている。僕らの、僕との子供が。
愛しくてその小さな生命が宿るお腹を優しく撫でる。

「男の子かな、女かな。はどっちだと思う?」

僕の質問に彼女はクスクスと笑う。
この何年かの間ですっかり敬語は抜けていた。
彼女がいつまでも敬語なのはおかしい。昔みたいに話して、と言って来たからだ。

「あなたが生まれた時の楽しみにするから性別は聞かないって言ったんでしょう?」
「それはそうだけどやっぱり気になるじゃないか。ねぇ、どっちだと思う?」

はそうねぇ…と言って顎に手をあて考えるように首を傾げる。

「男の子な気がするわ。これだけ早く出たいとお腹を蹴ってるんだもの、きっと元気な男の子よ」
「いや、もしかしたらおてんばな女の子しれない。君によく似た可愛い子が生まれてくるといいなぁ…」
「ふふ、私はレギュラスに似た男の子がいいな。小さい頃のあなたみたいな」
「元気な僕似の男の子じゃシリウスになっちゃうじゃないか!」

おどけたように言って目を合わせて笑いあう。
僕達は彼という存在に蓋をするでも忘れるでもなく思い出という形で心に残した。
今ではこうして笑い飛ばせる。

、」
「ん」

キスをしようと顔を近付け唇が触れるかという時にまた赤ちゃんがお腹を蹴った。

「自分を忘れるな、だってさ」

再びおどけたように言って困ったなと肩をあげると彼女はまたクスクスと笑って優しく自分のお腹を撫でた。

「あなたはパパとママの愛の証なのよ?だからね、心配しなくてもいいのよ」


僕は彼女の額とお腹にそっとキスをした。










室内で愛を聞いてた。

この゛愛゛は僕らの大切な、
 


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