風の噂にレギュラスとが付き合い始めたのを知った。
親達は俺との婚約はいつまでも渋って認めてくれなかったくせにレギュラスとの婚約は直ぐさま認めたらしい。
そんなにグリフィンドールである事が駄目か、と思いしらされたようだった。
彼女も同寮だというのに。
いや、ブラック家の子息がグリフィンドール、しかもマグルを支援している、というのがいけないのだろう。
彼女は決してマグルを差別したりしないがわざわざ近寄ったりもしない。
それに彼女の両親が嫌がるのは彼女をもマグル保護思想に染め上げた上、家を捨ててしまうのを畏れての事だ。
もし俺が家を出ればの立場は無くなる。
現に俺は家を出るつもりでいる。
俺には彼女を幸せにする権利なんかないんだ。
彼女がブラックの名に籍を入れれば自分達は義兄妹という事になるのか。
それでも家を出れば無関係になる。

「馬鹿だな」

今更家を出たくなくなるだなんて。
卒業して、家を出てしまえば確実にと会う機会なんて無くなるだろう。
遠くから見詰めるだけでもいい。ずっと彼女を見ていたい。


「俺とお前、もうお終いにしよう」

もし俺が誠意を示したら、彼女は戻って来てくれるだろうか。
そう思って……いや、願って関係のあった女全員をふって来た。
フラれた女達の絶望したような顔を見てあぁ、あの時自分もこんな顔をしていたのかと気付く。
だが今の俺にはそんなのに構ってる暇はないんだ。
彼女が取り戻せるというのなら俺はなんだってする。
近くで見れれば、なんて言ったがやっぱり俺には彼女がいないなんて堪えらる訳がないんだ。
自分と現状に対する苛々にぐっと手に入れる力を強めたらピリッと痛みが走った。
ついこの間までは自分に無頓着な俺に彼女がいつも世話を焼いて伸び始めると直ぐに切るように注意していてくれていた爪は今やすっかり伸びきってしまって凶器に早変わりしてしまったらしい。
手の平の爪の当たった部分からうっすらと、だが痛々しく肉が覗き、それをじっと見詰めているとぷくりと血の玉が出て来た。

――このまま伸ばし続ければ彼女はまた苦笑気味に俺の手を取って「全く、私がいないと駄目なんだから」と言ってくれるだろうか。

自分の浅はかな考えが余りにも馬鹿馬鹿しく、軽く手を振り血を地面に飛ばした。





爪が伸びた日数分だけ。

君の大事さが身に染みるよ。


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