「シリウスを色に例えるならやっぱり黒だよね」

昔、彼女にそう言われた事がある。
彼女は何でも色に例えるのが好きだったから。

リリーは原色の赤、ジェームズは真緑、ピーターはカナリアイエロー、リーマスはライトブラウン。
自分とリリーとの友情は黄緑、悪戯仕掛け人の絆は紫、ダンブルドアのおちゃめ加減はレインボー。
人物などはその人に関連した色が多かったが抽象的な物になると殆どが直感なんだとか。
別に色を付ける必要なんて何処にもないのにあいつは楽しそうにあれは何色だ、これは何色だ、と俺に話してくれた。
あいつが楽しそうに話した後、ふとそれを見てみると確かに見える、ような気がするのだ。あいつの言う色が。
それが中々面白くて俺はよく聴き入っては色を確かめていた。

そういえば、最近遊び過ぎてるせいかあいつの色談議も全く聞いていない気がする。
最後に色を付けているのを聞いたのはいつだったか。
そうだ。レギュラスだ。
擦れ違った弟のレギュラスを見てあれは灰色だと明言していた。

『兄弟でも色は違うんだな』
『勿論!似通る事はあるけど同じになる事はないもの。いくら外見や中身が似てたって本質は変わってくるんだよ』

俺は言っている意味がよく解らなくて曖昧にふぅん、と返した。
多分あいつの言う”本質”っていうのが色決めの基盤になるのだろう。

そんなあいつにも一つだけ色を付けられない色があった。

それは、
自分の色。

それだけはどうも分からないらしい。
だから俺に付けて欲しいと頼んで来た。
いつも俺が何かに色を付けようとすると必ずと言っていい程駄目だしをしてくるのに。
自分はあの時、結局彼女に何色、と言ったのだったか。


「なぁにシリウス、私といながら考え事?」

甘ったるい声音に自分は今とじゃなく遊び相手と居た事を漸く思い出した。

「別に…」

こいつは…そうだな、ワインレッドだ。
そしてこいつと俺の関係はショッキングピンク。
他の女との関係を考えてみても浮かんで来るのは同じような奇抜な色ばかり。
あいつとの色はもっと淡く、綺麗な色な気がする。



そう思ったら急にあいつに会いたくなった。

「俺、もう戻るわ」







貴方の恋は何色ですか。
そういえば聞いた事がなかった。
あいつは俺との関係を何色だと言うだろう。
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