私はシリウスにまた新しい彼女が出来た。
またしてもグラマーで美人の金髪さん。
先月は瞳の色の違うグラマーな金髪美人さんだった。
その前は確かスレンダーな栗色の髪の美人。

此処で一つ誤解を解いておきたいのは私もシリウスの彼女であるという事だ。
無論他の女とは違って私が公の彼女。
要するに本妻だ。
決して友人Aなどではない。
だから最初の表現には少し誤りがあるかもしれない。
彼女達は皆、彼の愛人たるべき位置に座する女なのだ。
何故彼を叱らないと怒る人も多いだろう。
私とて怒りを覚えぬ訳ではない。
昔、この事で彼を問い質した事があった。
その時彼は私に呆れたような顔をしてあっさりとこう言い放った。

『じゃあ別れるか』

彼の中で私との繋がりは面倒な思いをしてまで繋ぎ止めておきたい物ではないのだ。
彼と別れるだなんて想像も出来ない私は直ぐさま問い質すのを止め、泣いて縋った。別れたくはない、と。

惨めだった。

それでも私は別れるのだけは嫌で、以来彼の素行には一切口を出さなくなり、状況はどんどん悪化して行った。
生憎彼は悪くない、だなんて言える程優しい女でもないしそんな広い心も持ち合わせていない。
でも自分にも非がある事は十二分に理解している。
だって私は逃げてばかり。
立ち向かう所か考える事にすら怯えているのだから。

馬鹿馬鹿しい。
非常に、馬鹿馬鹿しい。

単純な事ではないか。
私は彼の事が死ぬ程好きで、彼は私の事など都合の良い女としか見ていない。
別に構わないのだ。
報われぬ愛を捧げ続ける、それとて滑稽ではあるが私の人生だ。
悩む事すら馬鹿馬鹿しい。
何年この状況を続けて来たと思う?
3年間だ。
丸々3年、私の立ち位置は変わらず彼の隣…いや、確かな名称を貰って三年なだけで実際はまだ喋るのもままならない子供の頃から隣に居た。
そう、例え彼の反対隣に見知らぬ女が幾度現れようともこの席を譲らなくて済むのならそれで満足だ。
本気でそう思ってた。

「ねぇ、シリウス」
「なんだ?」
「私の事好き?」
「俺らはそんな安い言葉で足りる関係じゃねぇだろ」
「うん…そうだね」


その安い言葉が欲しかったんだよ。
今思えばこれが私の決心を決めた一言だったのかも知れない。

別れの日はもうすぐ。




「あ」と「い」のわかれ歌。

愛と哀…――
ねぇ、私達にはどちらの『あい』が相応しいかな。


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