私は私が大嫌い。


saudade −サウダージ− ♯8  嫌悪









ビシャァァァァァッ!


「きゃははははっ!」


女生徒の笑い声と共に降って来たのは人一人を水浸しにするには十分な水だった。


ああ、またか。


言わずもがな、これはぞくにいう『虐め』。

あまりの幼稚さに吐き気がする。

この歳になってもまだそんな事をするなんて幼稚にも程があるだろう。

私は水浸しになったローブのポケットから杖を取り出し自分に向けて軽く振った。

ローブが軽く光を放ったかと思えば次の瞬間には水がかかる前の状態に戻っていた。

私が使ったのは自ら編み出した時間回帰魔法。

自分で言うのもなんだけど結構高度な魔法だと思う。

他にもいろいろな魔法を編み出したからある意味彼女達に感謝しなきゃいけないかもしれない。


「…授業行かなきゃ」


汚れてないとは思うけど形だけローブを叩いて立ち上がる。

さっき水をかけてきたのはもちろん『シリウスファン』の女の子達。

本当にいい加減にしてほしい。

一応シリウスとは別れてないとはいえ、自然消滅寸前なのにこれ以上私に何かしてもはっきり言って無意味だ。

まぁ大方、今シリウスと公衆の面前でいちゃつきあってる許婚には階級的に見て流石に手が出せないってとこだろう。



『アーリア・フォール』



それが婚約者の名前。


フォール家っていえばブラック家に並ぶ純血一族。

それに比べて私の一族は…八年前のあの事件でもう無きものとされている。

八年前、私の両親は他界した。


私の手によって。


多分この事を知っている人はこのグリフィンドール寮にはいない。

スリザリンなら知っているかもしれないが・・・。

私があの時家を継ぐことが出来ていればフォール家と張り合える…いや、それ以上の家だったろう。



そんな事考えてもしょうがないか・・・。

このまま付き合ってるのかどうかも分からないような状況は嫌だ。

話を付けなきゃ。

でも貴方に「お前なんか好きでもなんでもない」と言われるのが恐ろしくて、話しかけることすらままならない。




はぁ……あれ?シリウス?





「シリウス…」


お願い。気付いて?

もう一度でいいから私の事見て?


「…シリ「シリウス!!」


もう一度、今度こそは大きな声で呼ぼうとした瞬間、彼女が私の声を遮る様にしながら横を通り抜けた。

気付けば私の足はもと来た道を力の限り踏みしめていた。





「なんだ。アーリアか。」


誰かがシリウスの名前を呼んだと思ったらMs.フォールが走ってきた。



「何キョロキョロしてるのよ?」
「誰か俺のこと呼ばなかったか?」
「今ののこ「気のせいでしょ?何?シリウスったら浮気でもしてるの!?酷い…ケホッ、ケホッ…わ…」


今…態と僕に被るように言わなかったか?

あの声は


「大丈夫か!?」


何心配してるんだ?

君の彼女はこいつじゃないだろ?

彼女じゃないのに浮気も何もない。

それにどう見たってこいつのは演技じゃないか!


「えぇ、だいじょう…ぶよ…」
「大丈夫じゃないだろ!?走っていたりするから!」
「だってあなたがいたから…」
「取り敢えず医務室に行こう」
「え?い、いいわ!大丈夫よ!けほっ…でも、寮まで送ってくれない?」


は?はどうするんだ?

さっきの声は間違いなくのものだ。

追いかけなよ。

君がを奪ったんだろ?


「リーマス、俺こいつ送ってくるから先に寮に「僕が追いかけても良いの?」


送ってくるってことはは追いかけないんでしょ。


「は?何言ってんだよ。追いかけるもんなんてねぇだろ?」
「いいんだね?僕が追いかけても」


頂戴よ。

要らなくなったのなら、僕が貰うから。


「だから何を…「けほっげほっ!!…早く連れてって?」


…完全に確信犯だね、君。


「じゃあ僕は行くよ」
「おい!リーマス!」
「放っておきなよ。私にシリウスを盗られて悔しいんでしょ」
「はぁ?」







まだ、間に合うはず。

隠し通路と悪戯で鍛えられた足を持ってすればまだ間に合う。

ほら、いた。


!」


君は僕の声に軽い驚きを見せて振り返る。


「…リーマス?どうしたのそんなに慌てて」
「さっき、シリウスに声かけようとしてたでしょ?」
「え…?……見てたんだ…」


ねぇ、そんな傷ついた顔しないでよ。


「ねぇ、。いつまでこのままでいる気?」


がこの事に触れて欲しくない事は分かってる。

でもさ、僕にくらい相談してくれたっていいじゃないか。

"友達"なんだろ?

「僕、堪えられないよ。がこんなに苦しんでる姿見てられない」
「……」



  「、好きだよ」



「え・・・?」
「いいよ、返事はしなくて。分かってるから。ただ伝えたかっただけなんだ」

君がまだ彼のことが好きだから別れを切り出せないのは分かってる。

「リーマス…ごめ…ゲホッ、ゴホッ、ゴホッ!かはっ!」
!?」


頭が真っ白になりそうだ。

咳と共にの口から何が出てきた。

 真っ赤な・・・血?


「ごほっごほっ…!」
、君…」
「あ、はは・・・バレちゃったね」
「嘘…でしょ?」











嫌い。

弱い自分が大嫌い。












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この連載四ヶ月ぶりの更新?
やばいなぁ・・・。

ついにリーマスにバレました。
これからどんどん皆にバレていきますよー。
一部いつまでたっても気付かなくって後悔する人達もいますけど;;
ってか、リーマス君告っちゃいましたね。




2007.08.27.MON 朔