saudade −サウダージ− ♯32     訃報






が朝食を取りに大広間に向かった時には既にみな食事を始めていた。
クリスマス休暇の時の侘しさは何処へやら。
広間は戻って来た生徒達で大賑わいだ。
空いてる席はあるかと周りを見渡そうとしたがに気付いたリーマスがこっちだと手を上げてくれたのではそちらに行く事にした。

「おはよう。身体の調子はどうだい?」
「おはよう。もう大丈夫よ。昨日ぐっすり寝たから」

それはよかったとリーマスはデザートを取りにかかる。

「あ、シリウス。そこのパン取ってくれる?」
「え?あ、あぁ…」

不意に話しかけられたシリウスは慌ててパンをに渡す。

「…、俺……」
「いいのシリウス。そういうのは止めましょう。あなたが何を言っても現状が変わる訳じゃないもの。普通に、友達として振る舞ってくれると有り難いわ」

シリウスは一度きょとんとした後顔を輝かせながら頷き、ありがとうと小さく言ったその時、広間内にソノーラスが響き渡った。

「ごほんごほん、非常に残念なお知らせがある」

ダンブルドアの言葉に生徒達は何事かと話し始めた。

「あー…少し静かにしてくれんかの?」

少し怒気を含んだようにも思えるダンブルドアの声に大広間のざわめきはぴたりと止んだ。

「スリザリンのアーリア・フォール嬢が亡くなった」

場内が一気にまたざわめき出す。

耳を疑った。
彼は今なんと言った?
アーリアが死んだ?
嘘、嘘だ。
じゃあ何故スリザリンの女子は泣いている?
答えは簡単。


 彼女が本当に死んでしまったから。


ガシャンッ

突然隣で皿が割れる音がした。
真っ白な皿に乗っていたトマトスープが絨毯に染みを広げる。

「アーリア、が…死んだ?」

これでもかと目を見開いているシリウスは皿を落とした事に気付いてもいないのか手は皿を持っていた時のままの状態だし、下を見向きもしない。

「まさか、俺が…俺が冷たく当たったりしたから……」

「彼女はヴォルデモートに殺されたのじゃ」




その名前に広間中が凍り付く中、はただただ染みを広げていくスープを見つめていた。












2012.7.24.TUE  朔