saudade -サウダージ- ♯3 悲劇への傾き








実は私はシリウスに隠している事があった。

それはヴォルデモートに狙われていると言う事だ。


ヴォルデモートは一ヶ月に一度くらいの割合で夢に出て来ては私を誘ってくる。

どうやら私の強大な魔力が欲しいらしい。

流石のヴォルデモートでも他人の夢に侵入するのはたやすい事ではない。

しかしそれはあくまで私がヴォルデモートの声に応えていないからだ。

今はあちらからの一方的な通信のためたいした被害はない。

だが、もし私が一度でもヴォルデモートの声に応えてしまうと夢の中での通信が成立してしまう。

そうすればヴォルデモートは私を簡単に殺す事だって出来るだろう。


シリウスを巻き込みたくなくて中々言い出せなかったのだが今日と言う私の誕生日を機に打ち明ける事にした。


「シリウスの重荷になるだけかな…」



そんな事を考えながら私はいつものあのシリウスが教えてくれた場所でシリウスを何時間も待ち続けた。

けれどシリウスが姿を現す事はなかった。

体調でも崩して来れなくなったのかも知れない。

そう考えて私は寮に戻る事にした。
















戻る途中今の時間帯からして誰もいない筈の教室から明かりが漏れていた。

誰かいるのか、と気になりそっとドアの隙間から中を覗いてみる。

そこにいたのはシリウスと見知らぬ女生徒だった。

―シリウスまた告白されてんのかぁ。だから遅かったんだ。

と納得してじゃあまだ待ってた方が良いか、と踵を返そうとした瞬間、シリウスの声が聞こえた。




「愛してるよ」




私には言ってくれた事のない、ずっと言って欲しかった台詞だ。

こんな形で聞きたくなかった。



「本当に?」



女生徒が甘えた声で聞き返す。



「あぁ。世界でお前を一番愛してる」



目の前が真っ白になった気がした。






気持ちが悪い。


吐き気がする。


此処にいてはいけない。






真っ白な頭で考えられたのはそれだけだった。


どうやって寮に戻ったのかすら覚えていない。


気が付けば夢の中でヴォルデモートと対峙していたから。



ただあれは愛していた人の、愛してくれていると思っていた人の確固たる"裏切り"に外ならなかった。













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サウダージではシリウスは最低男です。

とにかくダメな奴です。へたれ所の騒ぎじゃありません;;

2007.03.25.SUN  Saku .