レギュラスが騒ぎを起こしてからというもの、は部屋に閉じこもって食事以外では外に出なくなってしまった。
食事に出て来ても厨房に直接取りに行ったりして皆が彼女に会える事は殆どなかった。
それはレギュラスも同様で二人して引きこもり状態を継続していた。saudade −サウダージ− ♯28 予感
レギュラスが騒ぎを起こしてからというもの、は部屋に閉じこもって食事以外では外に出なくなってしまった。
食事に出て来ても厨房に直接取りに行ったりして皆が彼女に会える事は殆どなかった。
それはレギュラスも同様で二人して引きこもり状態を継続していた。
「困ったわねぇ」
いつもの空き教室に頬に手を宛てたリリーの何度目とも分からぬため息が広がった。
「薬はちゃんと飲んでいるのか?」
「いつも部屋の前に置いとくと無くなってるから飲んでいるとは思うわ」
勿論セブルスが口にした薬、というのは発作を少しでも抑える為に彼が直々に作った物の事である。
リリーの答えにセブルスはホッと小さく息を吐き、鍋を掻き交ぜる作業に再び集中しだした。
「一応届ける度に声をかけてはいるんだけどね」
反応がないのだからどうしようもない。
彼女の気持ちも分からなくはない、きっとシリウスには一番話したくなかったのだろう。
例え今は別れてしまったと言えどそれなりの繋がりが二人にはあったのだから。
「困ったわねぇ…」
誰に話し掛けるでもないリリーの呟きにリーマスもセブルスも静かに頷くと扉が軋む音を立い開いた。
雪がしんしんと降り行く中真っ赤な車体の一部を白く染め上げたホグワーツ特急がホグワーツに到着した。
「ただいま愛しのリリー!」
開いたドアから半分叫びながら大きく手を広げたジェームズを受け止める者はいなかった。
あれ?と辺りを見渡すもお目当ての赤毛の愛しい彼女はおらず、小首を傾げた。
帰郷する際、一緒の列車にのるはずだったのだが急遽学校に残る事にした、との連絡が入っていたから学校にいるのなら出迎えてくれるものと思っていたジェームズは拍子抜けしたように頭をかいた。
「何間抜けな顔してんだよ、ジェームズ」
声のする方を向けば端正な顔をした自分の親友が。
「やぁ、君が出迎えとは珍しいね。明日は嵐かな?」
「ちょっとな……」
俺が迎えちゃわりぃかよ、と拗ねると思っていたのだが予想外にしおらしい反応だ。
「少し、いいか?」
ジェームズは珍しくしおらしいシリウスに戸惑いながらもうん、と頷いた。
「で、なんだい話って」
皆まだ荷物整理のために自室に篭っいて談話室はがら空きだったので一番座り心地の良いソファーを陣取った二人。
ジェームズに至っては完全に寛ぐ態勢に入っており本当に話を聞く気があるねかと疑いたくなってしまう。
「お前、リリーから何か聞いてないか?」
「…………は?」
イマイチ要領を得ない彼の質問にジェームズはそう答えるしかなかった。
「あ、いや、ほら、の事とか……」
「さぁ?聞いてないけど。よりでも戻す気かい?」
ジェームズがきょとんとして答えればこれ以上は質問するだけ無駄と判断したのかやっぱりいいや、とシリウスは男子寮に戻ろうとした。
「ちょっと待ってよ!気になるじゃないか!教えてよ!」
腕をしっかり掴んで強要するとシリウスはため息をついてソファーに座り直し、事の次第をかい摘まんで話した。
「それで?」
「それでって……」
「シリウスはどうしたいんだい?君にはアーリアがいる。なのになんで今更に構う?」
痛い所を突かれたからなのか答えを模索しているからなのかは分かりかねるがシリウスは押し黙ってしまった。
どうやら後者だったらしく再び口を開いた。
「正直自分でも分からないんだ。確かにアーリアを愛してるはずなのにと話してから急にあいつの存在が大きくなって来て…」
「また、君の浮気癖かい?から離れて行った時も似たような事言ってなかった?友達としてだって言うなら別だけどさ」
僕、君のそういう所は嫌いだな、と眉を潜めて言い放つ。
元々ジェームズは物をはっきりと言う性格だったしシリウス自身、浮気癖があるのは自覚しているので言い返す言葉もない。
でも、何かが違う気がするのだ。
「一応僕からリリーにも聞いてみるけどあんまり期待しないでね。とにかく話はアーリアかかはっきりさせてからだよ」
シリウスは少々罰の悪そうな顔をして頷いたがジェームズはこれは困った事になりそうだ、と頭をかいた。
真実と哀れな女の哀しい末路まであと少し。
今年ももう終わりですね。うん、早いわ。
来年も宜しくお願いします。
2008.12.31.WED 朔