「せーんぱーい。見つからないでーす」

「もっとよく探せレギュラス」

「しょうがないですねぇ」







 

saudade −サウダージ− ♯12  困惑







僕は今後輩のレギュラスと共に禁じられた森にこの時期のこの時間にしか採れない貴重な薬草を採りに来ている。
勿論先生に許可は貰って、だ。
が、貴重な薬草だけあって中々見つからない。
そろそろ無理矢理着いて来たレギュラスが飽きてきたらしい。
面白そうだから着いて来た、と言っていたが、本当によくわからない奴だ。
前にそう言ったら「貴族は疲れるんです。少しぐらい生き抜きしないと」と、なんだか若干疲れてた顔で言われた。

「あ、先輩!見付けましたよ!!」
「…今度こそ本当だろうな?」

さっきから何度同じ会話を繰り返した事か。
怪訝そうな顔で見てやれば、得意気な顔で返された。
レギュラスが摘み取ったそれを奪うように受け取って見てみれば確かにそれは自分の探し求めていた物だった。

「ほらね?」
「………よくやった」
「先輩、そういう時は"ありがとう"って言うんですよ。ほら言ってみ…………」

嬉々として僕に説教をし始めたレギュラスに呆れながらも周りにある目的の薬草を摘み取る。
突然後ろで喋っていたレギュラスが黙ったので不信に思って振り返った。

「どうした?」
「先輩、あれ………」

目を見開くレギュラスが指す方を目を凝らして見る。


先輩………?」


そこには倒れているがいた。

!!!!」

何が起こっているのかよくわからなかった。
ただ足は反射的に彼女のもとに向かい、心臓は嫌な予感でばくばくと波打ち、口は彼女の名前を叫んでいた。
追い付いてなかったのは自分の思考だけだったのか身体の全ての機関は状況を理解していたらしい。
漠然と頭にあるのは全身を一気に凍らせてしまうような悪寒のみ。

の目の前まで来て漸く少しだけ状況を飲み込めた。
何があったのかは知らないが彼女の身に何か起きたらしい。
今は物騒な時代だ。
もしかしたら死喰い人にやられたのかも知れない。

こういう時はどうすればいいんだ?
たしかあまり揺さ振ったりしてはいけないんだったか?
僕が何も出来ないであたふたしていると横からレギュラスが出て来てに近寄った。

「レギュラス?」

何の感情も感じさせない表情での手を軽く持ち上げ手を翳して脈をとったり瞳孔を確認したりしている。
生きている事を確認し、顔に触れて呼びかける。

先輩」

僕は呆然とその一連の動作を見ていただけだった。

「先輩、何してるんですか。誰か呼んで来て下さい」
「あ、あぁ。わかった」



言われた通り誰か先生を呼びに行く。
何も出来なかった自分に情けなさを感じながら。
拳に自然と力が入った。
皮膚が裂けそうになったがそれさえも気にならないくらい自分を呪いたくなった。















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初登場レギュラス。
次回はレギュラス視点で。



2008.03.19.WED  朔