「はぁはぁ、はぁ……ゆ、め…か」
きっと今鏡を覗けば、瞳孔が開ききって汗まみれの気味の悪い女が映るだろう。
手を顔に宛て、徐々に現実を認識してゆくとそれは自然と髪をかき上げる動作に変わる。
ゆっくりと息を吸って呼吸を整える。
自分の呼吸が整ったのを確認し、ローブを羽織ってそっとカーテンを開けた。
息を整える間に時計を見たが今の時刻はまだ朝の4時。
皆を起こす訳にはいかない。
ちらり、とリリーが寝ているか見れば安らかな寝息をたてていた。
リリーに私が起きた事がばれていないかも心配だったのもあるが、夢の事が恐ろしかったから確認した。
実は夢ではなくて本当に彼女に言われたのではないか、と。
今は違うが、いつか彼女に"化け物"と呼ばれる日が来るかもしれない。
それを考えたら身震いがした。
外に出て新鮮な空気を肺の中に精一杯入れる。
一人になりたくて外に出て来たはいいが、まだ日は昇っておらず、うっすらと霧が立ち込めていて肌寒い。
ローブを持ってきて正解だったようだ。
私はあまり何も考えず、ただ湿っていなさそうな所に座りこんだ。
「"化け物"…か……」
多分その表現は的確なのだろう。
私は幼い頃から必死に自分に違うと言い聞かせて来た。
冷静になって考えれば間違ってはいない。
だって私は…………
思考の淵に嵌まっていれば、突然激しい痛みに襲われた。
いつもの発作だ。
「…ぐっ……あ……かはっ……ゴホッゴホッ、ゲホッ………う、…………」
痛みを堪えようと右手を心臓に宛がい握りしめる。
先程まで口元にあったもう片方は地面につき、土に食い込むように力が入る。
ぶちぶち、と草が抜ける音と土が爪に入り込む感触がした。
だいぶ落ち着いてきて、私は寝転んだ。
自分の周りは酷い様だ。
魔力の微々たる暴走で自分の近くにある草木が枯れていて、地面が何か大きな塊でも落ちて来たかのように凹んでいる。
そして自分の吐き出した血が…。
現状を見るのが嫌で腕を目に宛て、呟きを零す。
「なんでかなぁ…なんで私なのかなぁ」
目をつむってそのまま死ねた方がよほど楽だ。
少なくとも卒業までの間ずっとこの苦痛を味わわずに済む。
身を引き裂くような痛みとはまさにこの事だろう。
発作が来る度に自分の身が裂けてるのでは、と本気で思う。
気がつけば私は夢の世界へと意識を飛ばしていたらしい。
誰かが切羽詰まったような声で私を呼んでいた気がする
。
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長くするとか言っといて大して長くないっすね。
はい、すみません。更新速度上げるんで許してください;
2008.03.16.SUN 朔