※attention!

 少々精神的に大人向けです。(一応+10設定)

雲雀は全く出てきません。
代わりに骸が出てきます。
ちょっと気違いなお話ですのでお気をつけくださいませ。
歪んだ愛とマゾヒストの続きですが単体でも読めます。






それは真っ直ぐに歪んだ、










乱れたシーツは昨日の情事の激しさを窺わせる。
「ねぇ、骸。『愛』って何?」
余りにも唐突におかしな事を聞くものだから骸は目を丸くした。
「恭弥がね、私の事抱きしめて『愛してる』って言ってくれたの。私すっごく嬉しかったのよ。やっと恭弥がこっち向いてくれたって」
そうですか。それはよかったですね。
平淡に返した骸の言葉を聞いているのかいないのか。
「でもね、なーんか違う訳よ」
「何がですか」
「何かわかんないから『何か』って言ってるんですー」
はぁ、とため息が自然と零れた。
手にしていたカップに目を移せば中身は既になくなっており再びカップにエスプレッソを小さなカップに注ぎ、そのまま口元まで持って行く。
その様をじぃーっと見詰める
視線に気が付いて骸が何かと問えばは骸に手を差し出した。
「私も飲みたい」
カップをもう一度見て中身を確認する。
「口移しでいいのなら」
骸はニヤリと笑ってエスプレッソを口に含みの頬を包み込むようにして上を向かせ、そのまま口内へ流し込んだ。
「うわぁ…ぬる……」
「猫舌の君には調度いいでしょう?」
は口端から垂れたエスプレッソをぺろりと舐め、舐め切れなかった分は親指で拭った。
何処か情欲的な彼女に骸はごくりと唾を飲んでそのまま彼女に覆いかぶさるように起こしていた上半身押し倒した。
「何盛ってんの?」
にとってはたいした事ではないのか平然と重力に従い自分の方に流れて来ている骸の髪を弄りったりしている。
「未だこんな格好でいる貴女が悪いんですよ」
はその白く綺麗な裸体を恥じる事もなくさらけ出している。
シーツでも使って隠せばいい物を。
「ねぇ、」
彼女は大きな瞳をぱちぱちとさせじっとこちらを見つめる。
「骸は私の事愛してるの?」
「前に貴女が述べた愛を愛だと定義するならば愛してるとは言い難いかも知れませんね」
「じゃあ骸が定義する愛なら愛してるの?」
「そうですね。僕は君を愛してます」
「難しくてよく分からないわ」
弄くっていた骸の髪をぱっと離し、するりと彼の下から抜け出してそのまま近くに脱ぎ捨てたままだったバスローブを拾い、彼が置きっぱなしにしていたエスプレッソを啜る。
「おやおや、君が拒否するとは珍しい」
「んー…気分じゃないし」
「どうやら本気で悩んでいるようですね。この間は流暢に愛を語っていたじゃないですか」
「まぁね。あれが変わった訳じゃないんだけどなんかね」
骸は自分の気持ちを持て余してるのか椅子に座ってぶらぶらと足を揺らすの長い髪を手に取り、口づける。
「僕との関係をやめたくやりました?」
「ううん。骸上手いし」
リオはカップを持ったまま窓辺に凭れ、意味もなくサッシをなぞる。
つつつ、と淵をなぞる様に動かしている自らの指を見つめたまま骸に問いかけた。
「骸にはさ、恭弥が私の事愛してるように見える?」
そうですね、と骸は首を傾げながら思案する。
「僕からして見れば“愛してる”ようには見えませんね」
無言のままの指がぴたりと止まった。
「ですが“愛”と言っても僕のような愛もあれば貴女のような愛もある」
「……そうね」
「彼なりに“愛してる”のでは?」
そうね、そうよね、と呟き、彼女は大きく高笑いを始めた。
その狂気じみた笑いに平静を保っていた骸も思わずたじろぐ。
「そう、恭弥は私の事を愛してるの!そう、そうよ!兄妹のようにね!」
彼女はカップを地面に投げつけた。
真っ白なカップ地面に破片となって散らばり、入っていた僅かばかりのエスプレッソが零れ、カーペットにシミが広がって行く。
「恭弥ね、好きな人がいるの。私知ってるの。私とは真逆で清楚な女でね。綺麗さで言ったら私の方が綺麗だけど女の私が見てもとても可愛い人だったわ。でもね、その人には別に好きな人がいるの。だから恭弥は諦めようとしてるのよ。私に対する家族愛のような物で自分の心を誤魔化そうとしてるの」
はしゃがみこんでカップの破片を一つ拾い上げた。
「私ね、もういらないわ」
拾い上げたそれをはすっと指先に滑らせる。鋭利なそれで切れた皮膚からはぷくりと血の玉が出来た。
次第に滴ってきたそれを満足そうに見つめるを骸はただ黙って見つめた。今彼女を刺激してはならない気がしたからだ。
「ねぇ、骸」
「なん、ですか」
破片を再び地面に投げ捨て、ベッドの骸に跨る。
「“愛してる“?」
何も感じさせない笑顔でニコッと問いかける
が何を言いたいのか、何をしたいのかわかった骸は彼女の頬に優しく触れ、ええ、と答えた。
 
「私もあいしてるわ」
「それは嬉しい」
「ねぇ、骸?」
「はい」
「殺してちょうだい」
「ええ」
 
 
 
「愛していますよ。



 

 
それは真っ直ぐに歪んだ、

愛しているのよ。
誰よりも。何よりも
 
 




2008.7.24 朔