※attention!
このお話の骸は髑髏ちゃんが大事で内容的にかなり暗いです。死ネタです。
無理そうだなって思った方は直ぐに引き返す事をオススメします。
最後に抱きしめて
「貴方の臓器をくれませんか」
あぁ、ついにこの時が来てしまった。
骸とは5年前、敵として出会った。
相手は敵なのに私は彼に見惚れてしまって声も出なくて仲間が殺されてゆく中、ただその場に馬鹿みたいに情けなく立ち尽くす事しか出来なかった。
そんな私に骸は手を差し延べてくれた。
「…さんですよね?僕についてくるのなら助けてあげましょう」
なんで名前を知ってるの、とかなんで助けてくれるの、とか聞きたい事は沢山あったけどそれらが私の口から出てくる事はなくて代わりに私の手は気がつくとと彼の手を取っていた。
多分、ううん。完全に一目惚れだった。
それからボンゴレのアジトに連れて来られてボスのツナさんや守護者の方々に紹介されたが守護者の方達はあまり私をよく思わなかったらしい。
私は骸の部屋で生活させて貰っているのだがツナさんがお茶に誘ってくれる時など以外あまり部屋から出る事はなかった。
骸が愛してると囁いて私を抱いてくれるだけで幸せだった。
でもある日身体の調子がよくなくて寝込んでいると骸が必要以上に心配してDr.シャマルに見てもらうよう強要してきたのでしょうがなくアジト内にいるDr.
シャマルの下を訪れると一人の女の子……いや、20代の女性に女の子というのは失礼なのだろうか、可愛らしい女性が眠っていた。
口には呼吸器が、身体にはいくつもの管が通っていてシャマルにそんなに悪いのかと聞けば彼女には臓器がないのだと言う。
「臓器がないのに生きてるの?」
「今までは霧の守護者の奴の幻覚で維持してたんだ。でもそろそろ限界みたいでな…」
「今の時代なら…いえ、貴方なら臓器の移植も可能でしょう?」
不思議そうに首を傾げればシャマルは苦々しげに首を振った。
前までは食が細すぎて手術に耐えられない身体だったのだが最近漸く耐えられる程に体力が付いたというのに彼女の臓器は平均より遥かに小さめで合う人がいないらしい。
しかも昨日から昏睡状態に陥ってしまって直ぐにでも適合者が見付からない限り死を待つのみだと言う。
それを聞いて漸く自分の生かされた理由を理解した。
私はこんなに小さい臓器は珍しいと昔医者に言われた事がある。
骸は私の臓器が欲しかったのだ。
最初から骸はその為に私の所属するファミリーを襲い、私を助けたフリをした。
何かの間違いで彼女が手術に耐えられるようになる前に私が死んでしまわぬように。
成る程、前以て調べがついていたから私の名を知っていたのか。
骸が必要以上にシャマルに診てもらうよう言って来た理由も分かった。
彼女の物になるこの身体に何かあっては困るからだ。
勝手に骸に愛されてると思い込んでいたとは我ながら勘違いも甚だしい。
私が病室に似つかわしくない高笑いを響かせるとシャマルは怪訝そうな顔したけどもうそんな物は気にならなかった。
「大丈夫、今にドナーが見付かって彼女は助かるから」
どういう事かと首を傾げるシャマルに直に分かる、と苦笑いをして私は病室を去った。
哀しくて、悔しくて、馬鹿馬鹿しくて廊下にうずくまった。
泣き出したいのに、なんで涙が出ないのか…。きっと心の何処かで全ての違和感に気付いてたのね。
「、貴方の臓器をくれませんか」
「うん、いいよ」
どうせ一度亡くしかけた命だ今更惜しくはない…と言ったら嘘になるがこの5年、骸と恋人ごっこが出来て私は幸せだった。それで充分。
骸の頬を優しく撫でて微笑む私に骸は少し戸惑う。
いやと言えない程までに私をのめり込ませたのは貴方でしょうに。
全くおかしな人ね。
「愛してるわ、骸」
あぁ、なんで今更涙が出るのかしら。
これじゃあおかしいのは私の方ね。
「ありがとうございます」
きっと最後に抱きしめてくれた貴方の温もりは死んでも忘れない。
最後に抱きしめて
この夢がずっと続けばよかったのに
あ と が き
全て最初から骸の思い描いていたシナリオ通りでした。
後編へ続いたりします。
2009.01.07(携帯版掲載日) 猫又 朔