ガチャ

「あれ?今鍵が閉まった音・・・って開かない!!?」

 

 



『幽霊なんていねぇ』とか言ってるわりに肝試ししたがらない奴っているよね。


 

 

「ちょっと新ちゃんどきなさい。私がやるわ」

「え?ちょ、ねぇさん?」

 

困惑する新八の後ろから妙がズイッと現れた。

一体何をするのかと思ったらドアノブに手をかけておもいっきり引っ張った。

 

「ぅおりゃァァァァ!!」

 

バキッ

 

金属が折れる鈍い音と共にドアとドアノブが分裂した。

 

「…あら、取れちゃったわ」

 

なんの悪びれもなく他人事のようにあっけらかんと言う妙。

 

「何が取れちゃったわ、だ!!どうするんすか?これじゃあ僕ら外に出れないじゃないか!!」

「うるせぇんだよダメガネが。出口なら職員玄関もあんだろ」

「あ、そっか」

「ったく…取り敢えず進むぞ」

 

皆はドアノブの取れてしまったドアを背に進み始めた。

 

「オイ、神楽ァ。最初の七不思議は何だ?」

 

銀八があの古汚い小説を読みながら歩く神楽に聞いた。

 

「トイレの花太郎ヨ」

「なんだその中間地点は。花子なのか太郎なのかハッキリしろよ。」

「花太郎は花太郎ヨ。それ以外の何者でもないネ」

「花太郎は男なんですかィ?女なんですかィ?」

 

沖田がひょいと顔を覗かせた。

 

「中間アル」

「中間!?」

「そうネ。その事で虐められて男子トイレで泣いてて外に出ようとしてドアを開けたら床が濡れてて滑って頭を打って死んでしまったらしいヨ。最後の台詞は『中間の何が悪いんだ!』だったとも書いてあるアル」

 

(うわぁ、悲惨だなぁ…。)

 

「おぉっとこのトイレじゃねぇか?」

「普通のトイレですね」

「そうね。でも普通そうだからって気をつけなきゃダメよ。いつ奴が出てくるか分からないんだから」

「奴?花太郎ですか?」

「銀ちゃん。このトイレアル」

「ハム太郎でもハゲ太郎でもなんでも来いっつーの」

 

ガチャッ

 

トイレの中にいたのはハム太郎でもハゲ太郎でもましてや花太郎でもない。

太古の昔から絶滅と言う言葉をしらない脂ギッシュな黒い生き物達だった。

しかも個室に溢れんばかりの量だ。

 

ガシャンッ

 

「いやいやいやいやないってコレは。確かになんでも来いっつったけどコレはなしだろ」

「ありえない量の脂ギッシュな生き物がトイレに敷き詰められてたヨ」

「だから油断しちゃダメって言ったでしょ。此処は戦場よ?」

「なんですか?コキブリウォーズですか?」

「ほら、土方さんの出番でさァ。マヨラーパワーを見せてやったらどうですかィ?土方コノヤロー」

「無理に決まってんだろ。沖田コノヤロー。いっぺん死ぬか?」

「俺は何も見てない。俺は何も見てない。俺は何も見てない……」

「よ、よし!もう一回開けてみよう。さっきのアレは幻覚だったのかも知れねぇしな」

 

銀八が心なしか汗ばんでいる手をもう一度個室のドアにかけるとその場にいた全員が息を飲んだ。

 

「開けるぞ」

 

ガチャッ

 

開けた瞬間に奴らの中の一匹が飛んで来た。

何故かエリザベスに向かって……。

 

『ギャァァァァァ!!』

「エリザベスゥゥゥゥゥゥ!!!!」

「こんな時でもセリフは看板(?)表示かァァァァ!!」

「貴様ァァァァ!エリザベスから離れろ!!」

 

一匹のゴキブリをエリザベスから触れずに追い払おうと奮闘している桂を呆れた目で見ていると不意に虫の羽が動く時特有の音が聞こえてきた。

 

「ちょ、やばくないッスか?なんか飛ぶ態勢にはいってるんですけど…」

 

振り向くと個室に敷き詰められた脂ギッシュな生き物達が羽をばたつかせて飛ぶ準備をしているではないか。

 

「「「「「「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 



「はぁ、はぁ、はぁ……」

「ふぅっ…危なかったぜ。全員いるか?」

「えーと…アレ?六人?」

「さーて。次行くぞー」

「「「「「おーう」」」」」

「おーう、じゃないでしょうが!明らかに桂さん達いないじゃないですか!!」

「気のせいだろ」

「あら新ちゃん。桂って誰かしら?」

「えぇ!?」

「桂なんていましたっけ?土方コノヤロー」

「俺は知らねぇな沖田コノヤロー」

「カレーニンジャー?知らないアル」

「誰もカレーニンジャーだなんて言ってねぇよ!」

「ヅラはなぁ星になったんだよ」

「あんたらのせいでな!」

「おいおいそれにはお前も含まれてるんだぜ?」

「うっ…」

「ほら、行くぞ」