HAPPY BIRTHDAY TO YOU ! 




今日の私は端から見たら落ち着きのない人だと思われるだろう。
自分でもそう思う程にそわそわしていて落ち着きがない。
無意味にカレンダーの前で立ち止まってじっと見詰めたり骸の執務室の前を用もなくうろうろしたり。

だって、今日は私の誕生日だったりするのだ。
もう完全に成長も止まって、お肌も曲がり角を迎える年齢だって(勿論頑張って保ってはいる)愛する人が傍にいて祝ってくれるならば歳を取る事もそう悪くはないと思えよう。
私だって浮足立たずにはいられない。

「む、骸!」

執務室から出て来た恋人に当たる人物、骸は私を視界に入れると調度よかったと顔を綻ばす。

「これ、お願いしますね」
「へ?」

手渡されたのは数枚の書きかけの書類。
私はきょとんとした表情で目を瞬かせてさせて骸と書類を交互に見詰めるが骸はニッコリと笑って無理矢理私の手に書類を握らせる。

「では、僕はまだ片付いてない仕事があるので。それが片付いたら髑髏の所に持って行って下さい」

くるっと踵を返し、相手の返事も聞かずに颯爽と行ってしまった骸。
私は訳も分からず一人ぽつんと廊下に残されてしまった。

 

 


「骸さんってば今日が私の誕生日だって忘れちゃったのかな……」

書類をさっさと書き上げ、髑髏の下に届けに来た私も最初は「なんなんだ!」と勢いよく骸に対する文句を零していた物の、哀しさがじわじわと身に染みて来て顔は俯き言葉尻もどんどん弱い物になってきた。
そんな今にも泣きそうな私の頭を髑髏はよしよし、と撫でてくれている。

、これボスに持ってかなきゃいけないの。着いて来てくれる?」
「いいけど……?」
「じゃあ行こ」

髑髏は返事を聞くなりそんなに乗り気じゃない私の手を引いて半ば引きずるようにして部屋を後にした。

どうせボスの所に届けるなら最初からそっちに持ってくように行ってくれればいいのに。
ボスの執務室はボンゴレアジトの中央に位置するのに対して髑髏の自室は施設内でも末端の方に位置している。
髑髏が携わった任務の書類でもないし別に綱吉に直接……というかパソコンで全て片付ければ済む話だったんじゃないのか。

嗚呼、もう。誕生日だっていうのに厄日だ。




「って…あれ?ここ宴会室じゃ……」
「うん。開けて?」

いつも表情にあまり変化の見られない口端を微かに上げて小さく首を傾ける。
女の私の瞳にもその動作は随分と可愛らしく映る。

大きな作りの両開きのドアを押すなり響く少しばかり耳につく小さな爆発音に反射的にをつぶる。
何が起こったのかとぱちぱちと目を瞬かせた。
目の前にはほのかに漂ってくる火薬の臭いに円錐形の筒、クラッカーを持ってこちらに向けている守護者やボンゴレの主要メンバー。

「誕生日おめでとう!」
「え?えぇ!?」
「はい、これ守護者と俺からのプレゼント」

戸惑う私の前にボスが代表して進み出て嬉しそうに封筒を手渡す。

「中身は後で確認してね」
「あ、ありがとうございますっ!」

何かおかしな物でも入っているのか笑いを堪えるようにしているボスに少し気掛かりを受けたが、有り難く受け取った。

「10代目や俺達の厚意だ。ありがたく思えよ」
「おめでとなのなー」
「極限おめでとうだぞ!」
「おめでとうございます。さんはいくつになってもお綺麗ですよ」
「暇だったから来てあげたよ。誕生日なんだってね。おめでとう」

照れているのか偉そうに言う獄寺さんにいつものなのな口調で眩しい笑顔の山本さん、相変わらずの熱血ぶりの笹川さんにサラっとキザな事を言うランボくん、そして群れが嫌いなのにわざわざ来て下さった雲雀さん。
それぞれに感謝の意を述べた。

「俺からはこれだぞ」
「リボーンさんも!ありがとうございます!」

彼が用意したのは大きな薔薇の花束。
骸が飽きたら俺の所に来いよ、とニヤリと笑うリボーンさんに私は苦笑いで返した。

「よう。おめでとう。ほら、これプレゼントだ」
「わぁ!ディーノさんまで来て下さってたんですか!ありがとうございます」

ディーノがプレゼントしてくれたのはパーティー用の素敵な黒いドレスだった。


「今日はを驚かす準備をする為に骸やクロームに時間を稼いでもらったんだ」

それで書類を渡されたりわざわざ髑髏の所に行かせたりした訳か。
私を足止めする為に。

「本当にありがとうございます!で、でも私なんかの為にこんなにしてもらっちゃっていいんでしょうか…」
「まぁ皆騒ぐのが好きってのもあるからさ!気にしない気にしない!さぁ皆さんせっかくご馳走用意したんだから食べましょう!」

ボスの言葉によって各々テーブルに散って行った。
私もせっかくだから頂こう!
そう意気込んでテーブルに向かおうとすると骸に肩を叩かれた。

「少し、外に出ませんか?」

バルコニーは冬らしく冷え込んでいた。
あまり寒いので思わずぶるっと身を震わせると骸はそれに気付いたのか自分の上着をかけてくれた。

「本当は二人で過ごしたかったのですが…」

綱吉君達がどうしてもと言うのでね、と苦笑いをする骸。

彼の紫がかった艶のある黒髪が夜風に揺れて隙間から左右違う何処か惹き付ける瞳が覗く。

「プレゼント、まだ渡してませんでしたね」

そう言ってポケットから取り出されたのは縦長の箱。

「ネックレス……?」
「えぇ。今はまだ結婚は無理ですがあと1、2年して仕事が落ち着いたら一緒になりましょう。それまでに逃げないよう首輪代わりです」

顔に掛かる髪を耳にかけて丁重に箱を開ければ中からシックなデザインのダイヤのネックレスが。

「わぁ…すごく綺麗……」
「ほら、付けてあげますから後ろ向いて下さい」

首元に触れる指先がどうも擽ったい。
それは物理的な物か、それても先程の求婚に近い彼の恥ずかしい台詞による擽ったさか。

「ど、どうかな…」
「クフフ、凄く似合っていますよ。来年はやはりこれと同じデザインの指輪ですかね」

ニッコリと微笑み、そのままギュッと抱きしめる。

「ずっと離しませんからね。生まれて来てくれてありがとう。誕生日おめでとうございます」




 

(綱吉君達からのプレゼントはなんだったんですか?)
(あ、まだ見てないんです。えーと、航空チケット?『新婚旅行の手配はしといたから』)
(……これはとっとと結婚しろと言う事ですかね)
(………みたいですね)


あとがき基、懺悔


うおー!死ぬ気で紫苑さんの誕生日と一周年を祝う!
とか思って挑んだんですがなんなんですかねこの出来は…。見るに耐えない…。
最初は綱吉さんお相手の話だったんですが気が付いたら雲雀相手の話になっててレストランとかそういう所に行く話だったんですが「え?これ雲雀?雲雀!?」みたいな事になりまして慌てて消しました。
それが今日の昼間の話です(えぇ!?)
そしてまたしても気が付いたらお相手が変わってました。
20日とちょっと悩みに悩んで変わりに変わってやっと完成しましたこの話、出来はあれな感じですが気持ちだけは詰めたんでどうぞ貰ってやって下さい!
えい!押し付け攻撃!(←迷惑極まりない)

改めましてお誕生日と一周年おめでとうございます!
来年は指輪を渡す話ですかね!←