「準備ってコレだけで良いの？」

怪盗時の服を鞄から引っ張り出すサキに暇そうにしていたランがソファーから乗り出して訊いた。

  BLACK LIST

      STAGE.�U この世の理の中で  �D

「そうぜよ。ランはレイの代わりになるべく警察に見付かり難くて逃げやすい場所を探してさっきの木の近くで待っとれ」

「りょーかーい」

ランが手を上げてソファーに座り直すと、サキは鞄から無理矢理引っ張り出した服を広げて着替えを始めようとした。

「ちょ、ちょっとサキ！向こう行って着替えてよ！」

慌ててサキを止めようとすると部屋を誰かがノックした。

コンコン

「どうぞ」

ドア越しに依頼人の双子が「失礼しますわ」と言ってゆっくりとドアを開けた。

「そろそろ出発しますの？」

マントを持っているサキをチラリと見て、双子は訊いた。

「あ、はい。もう直ぐ時間になるんで」

時計を見ながらランは受け答えをしている。

「厠は何処ぜよ？」
「かわや？あぁ、トイレの事ですね」
「この部屋を出て右に真っ直ぐ行けば分かりますわ」

場所を聞くなり無言で部屋を立ち去るサキを呆れた目で見詰めていたランは大きくため息をついた。

「これから怪盗しに行くって言うのに呆れちゃいますよね」
「ふふふ。サキさんはそういうお方なんですね」

双子は口に手を当ててクスクスと笑っている。

「いや、私も会ったばかりなんでよくは知らないんですけどね」

「「知ってるよ」」

「え？今何か言いました？」
「いえ、何も。それよりこれを持って行って下さいな」
「ブレスレット？」
「はい、無事取り戻せるようにお守りですわ」

「……右？左の間違いじゃなかか？」

ドアを開けて直ぐ傍にトイレはあった。
でもそれは左側に存在し、右側のトイレは随分先の方にある。
サキは不可解なこの現状に軽く首を傾げた。

「……」
「サキ？どうかしたの？」

サキは目的地に着くなり急にそわそわと周りを見渡し始めた。

「…しっ」
「？」

昼間よりだいぶ大きくなったサキはランの口を塞いだ。
そしてランの腕に着いていたブレスレットを取り外して警備は薄いが人の声が聞こえる程度の場所に乱暴に投げ捨てた。

「せっかく依頼人に貰ったのに！何で投げちゃうのよ！」
「『あの双子に貰った物』だからだ」
「え？」
「多分アレは盗聴器だ」
「なんで…」
「一旦ホテルに戻るぞ。明日もう一度双子の所に行く」
「盗みは？」
「一先ずお預けだ。あそこにあれば周りの警備の音も入るし明日まではもつだろ。尾行はされてないみたいだしな」

双子…怪しい雰囲気ですね。
サキさんは感の鋭いお方です。
因みにブラック達は弾の補充のために(普段は余分な弾は持ってない)一旦ホテルに戻ろうとしてます。
次回は遂に戦闘シーンか！？

2007.05.11.FRI　 　Written by Saku .