「オイ、ランとやら」
「何？」
「今何時だ？」
「は？」
BLACK LIST
STAGE.Ⅰ 黒い怪盗と囚われの紅い少女 ⅳ
今二人は強行突破をして全力疾走していた。
流石にあれだけの人数に囲まれてしまってはペンダントどころではない、逃げるのが先決だ。
「もうすぐで四時半だけど…それがなに？」
ブラックは自分は何をやっているんだ、と手を頭に当てて浮かない顔をしていた。
「ちっ…もうすぐ夜明けじゃねぇか」
「？」
そう、今は夏、夜が明けるのが早いのだ。
このままでは屋敷の中の奴らに昼間の姿がばれてしまう。
なんとしてもそれだけは避けねば。
「…げ、もう出て来やがった」
「？？？」
ランがブラックの言っている意味がさっぱり分からず首を傾げていると突然ブラックが視界から消えた。
「！！？」
驚いてバッ、と後ろを振り返ってみるとそこにはブラックではなく子供がだぼだぼのコートを羽織って廊下に座り込んでいた。
「な、何が起きたの！？…まさかあんたサキ？」
「そうじゃ」
「自分で変身をコントロールできないの？」
「…何でわしの能力を見て驚かん？」
「その能力のことは知ってるもの」
「なるほど、だから『鍵』の事も知っちょるのか」
「えぇ。…！悠長にお喋りしている暇は無いみたいね」
二人が止まっているとさっき振り切ってきた筈の兵達が追い付いて来た。
「…！？」
―――この臭いは……
「そういう事きー……」
バンッバンッバンッ！！
サキはマントをガサガサと漁って銃を取り出して無表情のまま発砲した。
「な！ちょ、ちょっと！？何やってんのよ！！」
「何って…発砲？こやつ等は人じゃないき撃っても問題ないろー」
そう、二人を追って来た兵達は元は屍。
それをロボットのように改造して動かしている。
鎧を被っていて分からないが生きているものとは違う死者特有の腐敗臭がする、身体が腐敗してしまっているのだ。
「…取り敢えず此処からでましょ、そうしたら私が一気に片付けるから」
ランも臭いでそれが分かったらしい。
「おんしそんな事出来るんか？」
ランは返事の代わりにサキに向かってニッコリ微笑んだ。
「此処から出れば良いんき？」
「え、えぇ。何するつも…」
ボッカーン！！
ランが言い終わるか言い終わらないかの内にサキは手榴弾を取り出して壁に向かって投げ付けた。
投げた張本人のサキは平然とした顔をしているがランはあまりの出来事に声を失っている。
「ほれ、コレで一気に行けるぜよ」
いろいろ言いたい事はあるが考えている余裕はない。
追っ手はそこまで来ているのだから。
「サキ！離れて！！」
外に出るなりランはサキに向かって叫んだ。
サキは訳が分からなかったがランの切羽詰まった声にその場から咄嗟に離れた。
サキが離れたのを確認すると、片手をいきなり前に出し、目を閉じて神経を集中させた。
何をするのかと思った瞬間目をカッと開いて追っ手達を吹っ飛ばした。
「！？」
サキの驚きも覚めぬうちに屋敷が崩れて来て屋敷の中にいた奴らを全員生き埋めにしてしまった。
「…まさかおんし異能者か？」
「…そう呼ぶ人もいるわね」
「あ！わしのペンダント！！」
「此処にあるわよ？」
ランド・レーションごと埋まってしまったのだ、取り出すのは不可能だろう…――と、思われたが何故かペンダントはランの手の中にある。
「ごめんなさいね。さっきコレが偽物って言ったのは嘘。そうでもしなきゃ協力してもらえない、と思ったから」
「じゃあレーションがもっちょったやつは何ぜよ？」
「あー…アレ？実は前以てレーションに気付かれないようにこっそり取り替えておいたの。欲しい？」
「それが本来の目的じゃき」
「じゃあコレあげる代わりに一緒に旅させて」
「構わんけど鍵の秘密を先に教えてくれんかのー」
「無理」
サキの本当に教えて欲しいのか分からないような態度にランはキッパリ断った。
「知ってるとは言ったけど教えるとは言ってないもの」
道を教える時の条件は屋敷から出す、ペンダントを渡す時の条件は一緒に旅させる、と言う事だった。
鍵の秘密を教えるとは一言も言っていない。
「うーん…コレは一杯食わされたのー」
ふぅ・・・久しぶりの小説更新ですね。
やっと一話分（？）終了いたしました。長い道のりだったなぁ・・・まだまだ続くけど★
サキは大分危ない人間ですね。普通に手榴弾持ち歩いて普通に投げてますからね。
ランの秘密が少ーーーーーーーし明かされましたね。
ランは異能者であって異能者でありません。（ちなみに異能者とは独特の変わった力を持つ人です）
まぁ異能者なんですけどね。只普通の異能者じゃないだけです。作者である私すらなんて説明すれば良いのか分かりません。
とりあえずこれから先の話を読めば分かると思います。
２００６．１２．２8．TUE Written by Saku .